鍼灸マッサージとは
鍼灸マッサージとは
鍼灸と書いて、通常は「しんきゅう」と読みます。 |
人気番組だった韓国ドラマの「チャングムの誓い」や「ホジュン」では、しばしばハリ治療の場面が出てきて、俳優の名演技に感動したものです。
しかし、次々と展開するドラマに心を奪われてしまったものの、治療場面ではとても違和感を感じたものです。
なぜなら、とても痛そうな治療場面が多かったからです。と言うのも、現在の日本では、韓国ドラマにでたような、太い鍼を片手だけでブスブスさすような施術は全くされていないからです。日本の鍼灸は、日本人の体質に合うよう歴史の中で研究開発されてきましたので、その技は繊細で、鍼の太さも髪の毛ほどのとても細いもので、ほとんど無痛で施術が受けられるからです。
さて、東洋医学といえば、「鍼灸・漢方」、「按摩・気功」などが代表的です。しかし、現代の日本では、前者の「鍼灸・漢方」が主な治療法と言えるでしょう。一方、後者は主流とは言いがたい存在です。なぜなら「按摩・気功」は気を巡らす施術法として、体系づけられてきたため、少し脇役的な存在になっていたからです。最近では、効果面では前者に決して引けをとらない施術法として見直されています。
それでは、ここで鍼灸の歴史と医学的な側面を覗いてみましょう。
まずは歴史的側面からです。日本の鍼灸漢方は、明治以前と明治以後では大きく変わりました。鍼灸漢方は日本古来から伝統医学としてずっと国民に愛されてきました。内科、婦人科、小児科などあらゆる疾病に用いられ、大きな成果をあげてきました。しかしながら、明治に入り日本の富国強兵政策で、西洋医学が主流になったため、蚊帳の外に追いやられてしまいました。確かに、感染医学や救急医学など伝統医学にない大きな魅力があります。しかし、生活習慣病の氾濫する現代においては、国民の健康を守る医学として、科学的な伝統医学の復興が期待されています。
次に医学的側面にも触れてみます。
鍼灸マッサージは自律神経を刺激するため、血行の流れを良くする働きがあることが医学的に証明されています。また、皮膚や筋肉に分布する感覚神経を刺激することで、刺激がフィードバックされて脳内の中枢神経が痛みを鎮めてくれる作用もあります。更に、自律神経と免疫系が同時に活性化されると、自然治癒力や自己免疫力といった体自身が本来持っている力を呼び起こしますので、伝統医学が本来果たさなければならない、予防医学に貢献できるものです。病の治療より病の予防が、伝統医学の勤めであると考えています。
最後に、日本における鍼灸マッサージの資格制度についても言及しておきます。鍼灸は東洋医学の国家資格として、はり師、きゅう師があります。文字通り鍼や灸を使用して体の回復力を導き疾病の治療ができる唯一の資格です。一方、古来から伝わる按摩に、マッサージと指圧が加わることで、鍼灸同様に国家資格として、あん摩マッサージ指圧師があります。どちらも高卒後、鍼灸専門学校または医療大学において3~4年間の医学的知識を学び、国家試験に合格したものに与えられる資格です。 |
鍼灸・按摩・マッサージの歴史
中国最古の医学書である黄帝内経・素問・異法方宜論に、『砭石は東方より来り、毒薬は西方より来り、按摩は中国におこり、灸は北方より来り、九鍼は南方より来り、導引按矯は中央より出ず』とある。 按摩は古く中国に起こった。按摩の按は『押さえること』で寫法を意味し、摩は『なでること』で補法を意味する。すなわち東洋医学の基本理念である虚実に対する補瀉であり、鍼灸、湯液とともに医療施術として発達してきたものである。 |
按摩は、十四経脈の流れの状態によって五臓六腑を伺い経絡に沿って虚実に応じ補瀉の法を加えて気血の流れを正しくすることにより疾病を治療する、これが古来の按摩である。導引按摩として古代中国に発生した按摩は日本に渡来して按摩導引、揉み療治とも言われ一般大衆に親しまれ今日に至っている。導引とは、筋骨を揺るがし、支節を動かすを謂う、按とは皮肉を抑按するを謂うと古書にある。
明治になり医学は西洋医学が主流になり、按摩理論も東洋医学の陰陽、虚実、経絡、気血の調整から、西洋医学の解剖、生理を基にした循環系、運動器系、神経系への調整術式に改められて今日に至っている。
マッサージの意義と沿革
マッサージはフランス語で語源はアラビヤ後の『おす』、ギリシャ語の『こねる』という意味の言葉から来たものといわれる。 したがって、マッサージは『手を以って、こねる、おす』という意味になる。 マッサージは、術者の手指を以って、生体の皮膚に直接、主に、求心性の手技を強弱の刺激として生体に加えて、生体の偏重を整え、健康を保ち増進させる施術である。 求心性の手技により血液、リンパ液の循環がよくなり新陳代謝が盛んとなる。その結果、組織の栄養は高まり、機能は盛んになり、抵抗力も強くなる。また触圧刺激は、皮膚知覚神経を介して内臓の機能にも影響を与える。 また神経液性相関の生体反応によりホルモン分泌にも影響を及ぼすことが明らかにされている。 |
按摩・マッサージ・指圧の相違
最後に三者の異同、特徴を述べて結びとする。 按摩は、薄い衣服の上から施術を行い、中心部から末梢の方向に筋肉を対象に揉捏法を主として筋肉の硬結を取り除き、筋組織の循環を良くし、新陳代謝を盛んにして栄養を高め、機能を盛んにする。 また目的にしたがって他の手技をいろいろ組合せてリズミカルな複合圧としての刺激を与えて、生体の機能調節を図る。 マッサージは、皮膚に直接、滑剤を用いて施術するもので、按摩とは逆に末梢から中心に向かって、主に循環系を対象に軽擦法、揉捏法を施し血液、リンパ液の還流を促し、また他の手技を組み合わせて、与える刺激に変化を加えて多種多様の生体反応を期待する。指圧は、薄い衣服の上から生体に現れる反応点を対象として、一点圧の刺激を遠心性に与え、圧反射機転により神経、筋の機能を調節するものである。 |